二木グループでは一緒に研究してくれる大学院生を募集しています。
3年生までに培った学力を基に、一緒に理論を理解し、プログラムを開発し、計算結果を解析して、これまで見えていなかった世界を見てみませんか?
4年生からの研究室生活は、小学校~大学3年生までの座学の形態から大きく変わります。
基本的には1つの仕事を任され、自分で研究計画を立て、研究経過やわからないところを端的に先輩や教員に伝えて解決をしていく……ということを毎日行います。
会社や社会は上記のようなことができる学生を求めています。
そのため、修士や博士課程を修了した学生の就職率が高い・就職活動期間が短いという傾向が続いています。
特に大手企業は、グローバルに活躍する幹部候補として博士課程卒業者を率先して採用しています。
最近は教員や文系職に関しても理系の修士卒を獲得したがるケースも見られます。
4年生は先輩について手習いのような日々です。
修士1年からは後輩も付き、修士2年以上はチームリーダー(課長職)のような地位に立ちます。
後輩とコミュニケーションをとり(饒舌に話せなくても可)、指示を与える練習を積んでおくことは会社に入ってから大いに役に立ちます。
卒業後30年近く、手持ちの学力と考える力を武器に社会で戦っていく学生さんにとって、修士課程・博士課程で基礎学力をさらに付け、仕事を進めていくのに必要なスキルを身に付けることは必ず役に立ちます。
長い仕事人生、違った分野の仕事が割り当てられることも往々にあります。
その際にも対応していける根本の仕事力を、4年生・修士課程・博士課程の研究活動を通して身に付けていきましょう!!
量子力学や電子状態に関する学習習慣が身についていて、勉強を継続して続けられる学生さんに来ていただきたいです。
共同研究が多いためプロの研究者とのやり取りが多く想定されます。
おおらかかつ、コアタイム・研究室の指針(ビジネスマナーに近い)を守れる方に来ていただきたいです。
我々のグループでは電子状態を明らかにします。
人類は様々な「物」の性質(物性)を知り、応用して文明を発展させてきました。おおよその物性は、電子の状態(電子状態)で決まります。
電子状態は光電効果(光を入射すると電子が出てくる効果)により観測できます。この効果を用いた実験手法に光電子分光、X線吸収スペクトルがあります。
また、電子状態は量子力学によって理論的に説明できます。
量子力学は100年以上前に確立され、現在も融合・発展しています。
当研究室では
1.量子力学・多体電子論を基にした電子状態の定式化
2.密度汎関数理論(DFT)を用いた電子状態計算
3.AIを用いた電子状態計算
を行い、物性解析を行っています。
さらに、オリジナルの光電子分光・吸収スペクトルの解析手法を確立しています。
現在進めている研究
分子薄膜の電子状態の探求
有機半導体は実用化され、応用分野ではウエアラブル装置への応用がどんどん進んでいます。
しかし、なぜ分子が並んだ結晶中に電子が流れるのかはわかっていません。
我々の研究は分子薄膜の電子の状態を可視化し、どうして電流が流れるかを理解していく第一段階の研究です。
これまでどうして分子薄膜の電子の状態がわからなかったかというと、実験がとても難しかったからです。また、理論計算も、分子単体の計算が主で、結晶という性質は無視されてきました。
最近、実験の精度が上がり、分子が連なったものとして性質を明らかにしていく重要性が明らかになってきました。理論計算でも、分子と分子の弱い結合や、振動を取り入れた計算が始まっています。これまで誰も見たことがない未知の領域へと踏み込んだ計算が始まっています。
研究室では分子の間の弱い結合や、分子と基板の相互作用を取り入れた計算を行っています。分子の間の振動がどのように、物質を伝搬する電子に影響を与えるかを明らかにしていきます。また、学生さんの発案をもとにAIを用いて薄膜表面の電子状態を明らかにする取り組みも始めます。
計算プログラムを国産の大型電子状態計算ソフトに組み込み、世界中の人が日本を拠点に研究をする足掛かりを作っていきます。
光を照射された物質中を伝搬する電子は多くの相互作用を受けています。光によって励起された電子の状態はほかの計算手法でも計算が可能です。我々の計算手法は、電子が薄膜の中で受ける「散乱」の効果も計算することが可能です。世界の中でオリジナルのプログラムを持つことで、誰も解決できない問題を解決できます。
これらの研究の一部は、ドイツのWurzburg大やフランスのRennes第一大学との国際共同研究です。国境や分野を超えて議論を交わし、まだ見ぬ新しい現象を捉える理論的枠組み・計算手法を確立していく過程は厳しくもあり楽しくもあります。
現在進めている研究
光触媒によるCO2燃料化反応過程の解明
酸化ジルコニウム(ZrO2)とニッケル(Ni)からなる光触媒を用いたCO2光還元反応の機構を密度汎関数理論(DFT)を基にした計算により検討しました。
その結果、ZrO2表面で酸素原子を失ったサイト(以下□と表す)が二酸化炭素(CO2)を捕らえ、紫外可視光の力で一酸化炭素(CO)に変え、COをNiに受け渡してメタン(CH4)を生成することを明らかにしました。この結果を基に、新たなカーボンニュートラルサイクルが実用化され、持続可能社会につながることが期待されます。
本研究成果は、2023年1月19日に、米国化学会The Journal of Physical Chemistry C誌にて電子出版され、2023年2月2日号(2023年4号)の表紙にも掲載されます。
これらの研究は光触媒研究の第一人者の千葉大学 泉研究室との共同研究で
現在進めている研究
X線吸収分光法を用いた磁性体解析手法の確立
円偏光と呼ばれる特殊な光を使うことで、物質の磁気的性質について調べることができます。 これは特に、2種類(右回り、左回り)の円偏光の吸収スペクトルの差分を解析することが一般的です。
当研究室では、この差分スペクトルに出現する磁気EXAFSと呼ばれる細かい振動構造が意味する性質の探求に取り組んでいます。
磁気EXAFSには磁性原子の配置に関する情報が反映されることがわかっていますが、 同時に複雑な効果も載っており、また差分スペクトル上の細かい構造ゆえに明瞭な実験データをとりにくいなどの理由から、 近年ではほとんど研究例のないテーマとなっています。
にもかかわらず我々が磁気EXAFSに挑む理由は、磁性と構造の関連を探る手法として磁気EXAFSが有力であるということにあります。 注目を集める磁性物質の中には、わずかに構造がゆがんだだけで磁気的性質が変化するものもあり、 その機構に大きな関心が寄せられています。
磁気EXAFSがそのような現象の解明に利用できる手法として活用できるような理論解析方法の開発を行っています。
複雑な効果も含めた解析には、理論計算が欠かせません。我々は理論式に基づく計算プログラムを自作し、 既存のプログラムの計算結果を援用してスペクトルのシミュレーションを行っています。
これらの研究は、世界の磁性研究を牽引してきた大阪大学との共同研究です。